Prologue
清潔で、純然で、完璧な社会は、調和を保とうと。
精密な工作機械の旋盤のように、数千万の人々は変わらぬ今日を繰り返す。
そこは、全ての人が同等の労働をこなし、同等の報酬を得るのだ。
仕事の無い者も、飢える者も、手に余る富を持つ者も居ない。
夢を持つ者も、夢に破れる者も居ない。
まるで孤独な惑星を誇るように、国家は過保護な繭糸で国民の流出と自由を制限した。
-以下省略-
作品解説
私達は、生きる限り、「どう生きるか」という議題から永遠に離れる事は出来ないのだろう。
そう考えあぐねく事は或る意味、「どう幸福になるか」ということと非常に近いように思える。
人生の中で有益で必要なものと無意味なものを振り分け、選ぶ。
まるで、遺伝子の法則に従うように、私達は自然とこのサイクルを繰り返している。
これを、人生設計というなら、私達の未来はまだ明るい。
それは、暗に明日が存在している事を指し示しているのだから。
しかし、人生は終わる。
寸分の違いなく、身分が違えど、生きた長さが違えど、公平に舞い降りる。
予期されて。いや、あるいは突然に。
後に取っておいた美味しい物だけが食卓に残され、それを口に運ぶ当人は居ない事などままあることなのだ。
結局、私達は幸せになれただろうか。なれるのだろうか。
幸福の基準とは?正しい選択とは?
永遠に尽きない疑問に私達はいつまでも翻弄される。
幸福になりたいという底の無い欲求、見栄や誇り、金や名誉に身を焦がされてもなを。
私にはそれを完璧に解決する術はない。
しかし、私の全ては糸口を探り続ける。
現実は必ずしも思うようにはならず、不条理の海で、奇跡を信じたりもする。
もがいて救われる者、もがいても救われない者。
「私は、私をどれ位信じられるか?私は、君をどれ位信じられるか?」
それが私の、実に正直な答えであり、今、この瞬間の感覚なのだ。